西ベルリンの宿探し

[西ベルリンで泊まった部屋]
西ベルリンで泊まった部屋

国境を越え、東ドイツへ入ると道路を走る車が急に粗末になった。日本の初代パブリカのような小さな車ばかりで、しかもサビていたり、ドアだけボディーの色と違っていたりする。ちゃんと走っているのが不思議な感じがした。

やがて列車は街を抜け、田園風景が広がった。地平線まで続く牧草地のような場所に出て、遠くの方にポプラのような並木が朝もやの中に霞んでみえる。列車に揺られながら、日本では見たこともないような異国の幻想的な風景をボーッとながめ続けた。

西ベルリンに入るとまた車が立派になり、建物も近代的になった。ドイツらしく、日本と同じように列車は時刻通りにZoologischer Garten駅に着いた。Zoologischer Garten(ツォーロギッシャーガルテン)というのは英語で言うzoological garden、つまり動物園のことで、その名の通り、駅のすぐそばに動物園がある。

「地球の歩き方」にしたがって、駅から南へ少し歩いた所にあるEuropa Centerという建物の一階のInformation(観光案内所)へたどり着いた。やはりベルリンはその頃注目の場所であっただけに観光客が押し寄せていて、観光案内所もすでにかなりの混みようだった。「なるべく安い宿を」ということでお願いして、かれこれ1時間半も待たされた後、ようやく泊まる場所が決まった。ホテルではなく、いわゆるprivate roomと呼ばれる民家の間借りのような形式で、家の主人は英語が少し話せるということだし、朝食付きで37DM(当時1DM=87.75円)なのでそれほど高くもなく、ほっとした。

後で聞いたのだが、夕方あたりにZoologischer Gartenへ列車で着いた人はもう宿がなく、駅で夜を明かした日本人の女の子もいたそうである。早めに着いて本当によかったと思う。

住所と地図を渡されたが、初めての土地で住所を頼りに家を探すというのはなかなか大変である。目指すBrandenburgische StrasseはZoologisher Gartenより西にあり、歩いていけない距離でもないが、なにしろ大きな荷物を背負っているし、係りの人も地下鉄で行けというので地下鉄で行くことにした。

ベルリンにはU-Bahnという西ベルリンだけの地下鉄と、S-Bahnという東ベルリンと西ベルリンを越えて走っている地下鉄があった。U-Bahnは西ドイツの国鉄が経営しているのでユーレイルパスで乗れると「地球の歩き方」には書いてあるが、もし違っていたらどうしようと心配で、駅の前で二の足を踏んでしまった。しかし思い切って乗ってみると、普通の鉄道と同じく改札はないし、検札もないので拍子抜けした。途中で一度乗り換え、Adenauerpl.駅で降りた。

Brandenburgische Strasseはすぐに見つかり、あとは番地を頼りに歩いたが駅から15分くらいかかった。マンションのような感じだが、戦前から建っているのではないかと思えるほど古い建物だった。おまけに建物の入り口が普通の家のドアのようで、本当に入っていいのだろうかと迷ったが、悩んでいてもはじまらないので思い切ってドアを開け、暗い階段を登っていき、ようやく目的の部屋を探し当てた。

呼び鈴を押すと、中からこの家の主人であろうと思われるドイツ人のおじいさんが出てきた。冷や汗をかきながら英語でEuropa Centerの案内所で予約したことを告げると了解して招き入れてくれた。家の中は外からは想像もつかないほどきれいで、予想外だった。廊下を突き当たった右側の部屋に通され、ここが泊まる部屋だと言われて驚いた。上の写真でわかるように、家具はしゃれているし、ベッドもきれいだし、本棚には旅行者用にベルリンの案内書などが並んでいて、ベッドのわきには真鍮のパイプで作った台の上にきれいな洗面器に水が張って置かれてあり、いちごの形をした小さい石鹸まで添えられている。バスルームもきれいで、小さな袋入りのシャンプー、リンス、オーデコロンまできちんと洗面台の上に置いてある。ベッドの横の洗面器は、起きた時に顔を洗うためのものであろうが、もったいなくてとても使えなかった。

この家の鍵と、建物の入り口のドアの鍵をもらい、荷物を置いて少し休んでから、いよいよベルリンの壁を見に出かけることにした。

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